入院生活② イチロー選手の引退会見
2019年3月22日
ジストニア発症から入院の日まで、
手術への恐怖、
本当に治って演奏ができるようになるのだろうかという不安、
もし治っても
闘病した分、同世代や年下のギタリストの方々に
技術的に、また演奏経験や仕事内容などで
差をつけられてしまっているのだろうなという悔しさなどで、
本当に落ち込んでいた僕を物凄く励ましてくれたのが、
入院中、
2019年3月21日に東京ドームで行われたマリナーズ対アスレチックス戦、つまりは
イチロー選手の引退試合、
そしてその後の会見でのイチロー選手の言葉でした。
本当に自分のことだけでいっぱいいっぱいだったので、あれだけ話題になっていた
あの試合が21日に行われることもすっかり忘れていたのですが、
翌日の朝のニュースでイチロー選手の引退を知りました。
イチロー選手の交代からチームメイトとのハグ、そして会見をノーカットで見て、我慢できずめちゃくちゃ泣きました。
1時間半近くの長い引退会見でしたが、全部見終わるまであっという間な感じでした。
特に、会見中の
「イチロー選手の生き様でファンの方へ伝わっていたら嬉しいなと思うことはありますか?」
という質問に対してイチロー選手が仰ったことが、
本当に僕を励ましてくれました。
イチロー選手
「人よりも頑張るなんてことはとてもできないんです。
あくまでも量りは自分の中にある。
自分なりにその量りを使いながら、自分の限界をちょっと超えていく。
そうするといつの日かこんな自分になっているんだっていう状態になって。
少しずつの積み重ねでしか、自分を超えていけないと思っているんですよね。
一気に高みにいこうとすると、今の自分の状態とギャップがありすぎて、続けられないと僕は考えている。
地道に進むしかない。
進むだけではなく後退もしながら、
ある時は後退しかしない時もあると思う。
自分がやると決めたことを信じてやっていく。
でもそれは正解とは限らない、
間違ったことを続けてしまっていることもあるんですけど、
そうやって遠回りをすることでしか本当の自分に出会えないという気がしている。
そうやって自分なりに重ねてきたことを見てくれていて頂いていたのかなと思って、
それは嬉しかったです。」
本当におこがましいことですが、まるで自分に言ってくれているように聞いてしまいました。
自分の現状はまさしく「後退」で、
間違ったことを続けてしまった結果でもあったのですが、
そういう「遠回り」を、
あのイチロー選手が良いことだと仰っていること。
絶対に治して、
演奏者として自分が目指す場所まで到達して、
この闘病を良しと思えるようになろうと、
本当にこの瞬間前向きになりました。
塞ぎ込みがちな入院中に
この歴史的な出来事があったことは、
僕にとっては本当に奇跡的に思えて、
この日は胸がいっぱいでした。
体の状態は、頭痛は収まりましたが
少し左足の踏ん張りがきかなく、
左側によろめきながら動いていました。
ただ、シャンプーやお風呂に入ることもも許され、
売店にふらっとよるような余裕も出てきました。
それでも小指が曲がり、
硬直する症状はほとんどなくなりましたが、
今まで得意としていた
ペンタトニックスケールでの速弾きや、
コピーしたフレーズ(スティーヴィーレイヴォーンやAllen hindsのフレーズ)
などは弾けなくなっていました。
定位脳手術を受けた方々の殆どがおっしゃっていた、
今まで身につけてきた手のテクニックが、
リセットされたようにゼロに戻る感覚があるというのは本当だなと思いました。
ただケニーバレルのフレーズは少し弾けました。
ケニーバレルのフレーズは、
特定のコードの時に、
そのコードの何度の音を使ってソロを取っているか一音一音分析しながらコピーしたので、
頭と耳が覚えていたからだと思います。
Allenやレイヴォーンのフレーズは手グセとして覚えていたので、指が忘れてしまったという感じ。
やっぱりただ耳コピするだけでも、アプローチの仕方で吸収のされ方が全然違うのだなと感じました。
今このブログを書いているのは手術後3ヶ月経過していて、まだリハビリをしており、
指の状態もまだ30%程しか戻っていませんが、
この3月22日に励まされたイチロー選手の言葉を思い出しながら、
今も頑張っています。
すこし長くなってしまいましたが、
入院中の出来事その2でした。
ここまでお読み頂き、ありがうございます。